川崎が晴れていて本当に良かった

これは、2025年の8月に川崎を訪れた記録。

神奈川県には静岡銀行がかなり出張ってるなーと感じることが多いのだが、川崎駅にもご多分に漏れず静岡銀行の看板があった。既にここは神奈川県なのだ、と静岡のものを見て思うのは、どうかと思いつつも、やっぱりちょっと面白い。

川崎といえば、京急川崎から大師線に乗ったりとか、乗り換えたりとかした程度。ちゃんと降り立ったことはあまりなく、思ったよりデカくて綺麗な駅なんだなーとなった。

ラ チッタデッラ

京急本線をくぐって ラ チッタデッラ という陽気な街並みの商業施設へ。

並木道を歩くと、いつのまにか黄色や茶色の美しい外壁に囲まれている。曲がりくねった道に、急に現代的なガラス張りの塔……調べるとイタリアの城郭都市がモチーフらしく、めちゃくちゃ明るくて楽しい空間だった。

広場では鐘が鳴っていた。いや、むしろこれで鳴らないほうが不思議だ。鐘が鳴るべき祝祭感のある空間。ゆるい坂道、ゆるいアーチ、小さな噴水、とにかく「それっぽい」が詰まっている。けっこうこういう雰囲気の建築物は多いと思うが、これはそれっぽさの粒度が高い。なぜだろう……。

とくに路地は本当にそれっぽい。ひさしがあって、植栽があって、電球が壁から壁へと伸びていて、それぞれの影が、黄色い壁や石畳に美しく落ちていた。この影こそが、それっぽさを増幅させているような気がした。

晴天だったこともあって、雰囲気もなんとなくイタリアっぽくて(雑すぎる)、ポップコーンやらスパゲッティやら、いろいろいただいた。

これは光とか影とかとはあまり関係のないポップコーンソフト

ところでさっきから思っていたのだが、この街、東芝のエスカレーターが多すぎやしないか。いたるところが東芝のエスカレーターで、そんなことある?と思ってしまう。そんなことを思いながら、次の目的地へ。

ラゾーナ川崎プラザへ

JR川崎駅に戻り、反対側へと向かうと「ラゾーナ川崎プラザ」だ。駅からそのままペデストリアンデッキ的なものを渡っていくと、緑色の芝生と白い大屋根が目に飛び込んでくる。

あまりにも爽やかで戸惑ってしまうほどだった。とくにこの日は晴れ渡っていて、この青空と白い回廊、そして大屋根の対比が、おそろしく爽やかだった。

広場を囲む白い回廊があまりにも爽やか

ラゾーナ川崎プラザは大規模なショッピングモール。真ん中には前出の広場があり、白い回廊が重なっている。

屋内型のショッピングモールの館内はよくあるショッピングモールのように見えたが、中央は吹き抜けで、屋根の部分が窓になっている自然採光だった。白く美しい壁に落ちるリズミカルな格子の影が、時間によって徐々に変化して落ちていくのだろうと思う。お店を見ている間には気付かなかったのだけれど、この吹き抜けを囲む廊下になっている部分は照明がシックな感じで暖色系だったこともあって、ふとした瞬間にこのパキッとした白い壁と影に気付いたとき、あまりにも美しくて仕方がなかった。

印象的な光と影

川崎のこのふたつの商業施設は、どちらも影が印象的だった。片方はイタリアの街並みが徹底的に再現されたテーマパークのようですらあり、とくにその路地の気持ち良さに心を打たれた。もう片方は、その壮大な広場とそれを取り囲むリング状の白い回廊、そしてなにより自然採光の窓枠より落ちてくる影の美しさ。影の種類こそ違うものの、美しい光と、それが落とす影がとても印象的だった。

さて、この街について調べると、いろいろと分かってくることがある。ラゾーナ川崎は、東芝の工場跡地に建設されたものだったからだ。この街はもともと工業の街だった。東芝製のエスカレーターが多いのも当然だ。

川崎はラテンの血を求めたのかもしれない

たしかに、なんとなく関東に居住を置いている余所者からの勝手な印象としては、川崎は血の沸き立つような工業都市という印象が強かった。少なくとも、決して静謐な街ではない。シュッとした感じでもない。

ところで、今回の2つの施設は、南欧に関係している。ラ チッタデッラはイタリアの城郭都市をすごいクオリティで再現しているし、ラゾーナ川崎は「ラゾーナ」がスペイン語由来の造語な上に、リカルド・ボフィルというスペインの建築家が参画している。これは偶然と言ってしまっていいのだろうか。

工業都市から、商業都市として生き返るために目を付けたのが「ラテンの血」なのかもしれない。東京と横浜に挟まれた特殊な土地で——そして、活気と陰を併せ持つこの土地で。そんなところでそれをするには、外からの陽気な視点がどうしても必要だったのではないか。そして、川崎の街を、工業と労働者の街を、重苦しさと活気を併せ持つこの街を、外から入ってきた祝祭のような光が照らしたとき、その影はより濃く伸び、しかし美しくなったのだと。自分は、なんとなくそんなストーリーを考えてしまった。

もちろん、平成という時代は、建築において南欧っぽい雰囲気が流行りではあったし、よりもっともらしい合理的・現実的な理由は、いくらでも見付けることはできるだろうし、自分のこれは完全にこじつけだ。

いずれにしてもこの日、美しい光と影を覗くことができた。

川崎が晴れていて、本当によかった。


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