あるいは民放テレビとは何なのか。
民放テレビは広告の需要の器
逆にいえば広告の需要がない場所にテレビ局を作られることは稀だったりする。よって、その地域の放送局の数は、広告にアクセスできる人口や、広告を出せる企業がどれだけあるかが分かるバロメーターとされることもある。
そこでよく言われるのが、「岡山はテレビが5局あるから広島より都会」である。ただ、ちょっと待ってほしい。ここで大事になってくるのが、その民放テレビがどれだけのエリアを対象としているのかである。
たとえば、首都圏の一都六県、関西の二府四県、名古屋を中心とする東海3県など、複数の都府県を対象としている放送局があり、これを「広域放送」と呼ぶ。逆に、単一の都道府県を対象とするものは「県域放送」と呼ぶ。この県域放送は、大抵の場合、一つの都道府県を対象とする。
ただし、テレビ局において、県域局の放送対象地域が複数県に設定される「例外」が2つある。それもどちらも中国地方に。山陰(島根・鳥取)の民放3局と岡山・香川の民放5局だ。
岡山と香川合わせて「5局」
この例外が制度として認められていた当時、岡山と香川には2局ずつあった。岡山のRSK(TBS系)、OHK(フジ系)と、香川のRNC(日テレ系)、KSB(テレ朝系)だ。
電波というのは県境を超える(むしろ国境すら超える)。香川には岡山の電波が瀬戸内海を超えてきており、しかも県の面積が小さいことも幸いして、ほとんどの地域で「民放4局」を見ることが出来ていた。一方、岡山では山間部では香川の放送などが受信できてはいなかった。
これについて代表的な逸話がある。この4局のなかで一番最後に出来て経営体力の小さかったKSBが、小豆島に送信所を建設し「小豆島にアンテナを向けてください」という広告を岡山に出したため、岡山の企業が広告を出しはじめたらしい。
現実的な問題として、将来岡山と香川にチャンネルが増えると、チャンネル数(電波の枠)が足りなくなるという懸念があったようだ。国は、さまざまな事情も考慮し、1979年に、岡山と香川の放送エリアを1つにするという決断をした。
これに伴って、それぞれの放送局が「はみ出ないようにしていた」制限を解除したことで、80年代には両県のほとんどのエリアで4局が見られるようになっていた。しかし、構造としては、岡山に2局・香川に2局あるという形である。
なお、ラジオについてはこの通りではなく、RSKは岡山、RNCは香川のみを放送の対象としているし、NHKもそれぞれに放送局を持っている。
岡山と香川で5局を維持している
放送エリアを相互に乗り入れたことで、放送エリアの人口も産業の規模も拡大した。また、系列局を拡大したいテレビ東京にとっても、1つの局を立てれば中国地方と四国地方に系列局があると言え、コスパが良かった。こうして3局目が岡山に誕生した。
結局のところ、岡山・香川エリアの5局体制は、2県がタッグを組んで維持できている。大事なのは、岡山の都市規模だけで維持しているものでは決してないということ。一方で、広島は単体で4局体制。岡山と広島のテレビ放送における前提が違いすぎるため、正当な比較ではない。
都市の規模と受信目安とされるチャンネルの数は、都市の発展の目安には確かになる。しかし、民間放送局が地域に出来るというのは、今回の岡山香川のような地理的な要素もあるし、政治的な要素も多分に含むので、単体の個別の比較をするときには、ぶっちゃけあんまり使えない。岡山に本社を置くテレビ放送局の数でいえば3だが、それも岡山という都市規模を正当に評価しているとは言えないし、広域局のあるエリアには県域局が1つしかないが、それも正当な評価とは言えないわけで。
とはいえ、そういうことを抜きに、岡山には香川というタッグを組める相手がいることを広島県人としては羨しく思う。さらに言えば、こういう論理抜きの感情的なやりとりで「やりあえる」広島と岡山のライバル関係ってけっこう幸せかもね、みたいなことも、ちょっと思ったりする。
広島も岡山も高松も、立派な都市であることに間違いはないし、中四国のさらなる発展を願うばかりだ。
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