アラフォーになった

いろいろ書いては消し、書いては消しを繰り返していた。アドベントカレンダーである。今年は本当に何も思いつかないまま繁忙期を迎えてしまって、本当に困った末に、10年前の自分に手紙を書いて、それをアドベントカレンダーとすることにした。

いや、とち狂ってるってのは分かっているのだけれども、2024年の4月で上京して今年は10周年だったし、今日、自分はアラフォーと呼ばれる時期に突入するわけで、いろいろと節目でもある。そういうときに、10年前の25歳になりたてほやほやの過去の自分に手紙を書いてみるというのは、案外いい試みかもしれないと思ってしまったのだ。それを公開する意味はちょっと分からない。というか単純にとち狂っているように思うのだけれど、それでも、今一緒にいるビバ丼の先輩方に、ちょっとだけ共有したい気持ちになっているのだ。


やぁ、未来の自分です。どういうこと? それは置いておこう。そこをごちゃごちゃ言っても仕方ないから、そういうものだと受け入れてほしい。とにかく、お誕生日おめでとう。25歳になったんだね。自分は35歳になりました。

35歳の自分はどうしているかって……? いや、まあそれはあとで書こう。

とりあえず、今年の春に上京した君。大学の頃に仲の良かった部活の3人でルームシェアしているよね。中央線沿い徒歩9分くらいの一軒家で13万円しない物件を見付けて……いやぁ、本当に破格だった。3人で割って月々の家賃5万円せずに上京できたわけだ。住みはじめて、8ヶ月くらいかな。住み心地はどうだろう。自室に鍵こそないけど、けっこういいよね。風呂もトイレも綺麗だし、キッチンも広いし。ダイニングにイケアのパイン材の安いテーブル買ってさ。

でも、親にはいろいろ言われたよね。「『その3人』で暮らすのってどうなの?」って。その話はけっこう当たってて、まあ、いろいろあったよ。

それでも2014年は、ふたりと、あと一緒に上京してきた大学の友人を交えて、東京タワーにいったり、国立のムレスナティーを出す紅茶屋さんに行ったり、出来たばかりの立川のIKEAに行ったり……みんなで「キッチン男の晩ごはん」にもいっぱい行ったなぁ。5月には「アナ雪」を新宿ミラノ座で見たよね。すごくいい劇場だなぁ、と思ったあとで閉鎖のニュースを見て悲しくなったり。でも、この街ではそういうことばかり。これからもいっぱいあるよ。いいものと出会っては、知らない間に終わってしまう。そんなことの繰り返しだ。ちなみにミラノ座の跡地には、歌舞伎町タワーっていうすごいビルが建つ。2023年以降、そこには何度か訪れることになるんだ。

とにかく、今、君が楽しいと感じているその環境は、まだまだ続く。君にとって大事なことって、どこに行くかじゃなくて、誰といっしょにいるかなのかもしれない。彼らと一緒にいる楽しい日々は、もうちょっと続く。


ところで、君は、出来る限り無限に働いている感じがする。まあ分かるよ。どこで手を抜けばいいかを教えてくれる人なんていなかったし、愚痴を言える相手もいなかったし、ほかの社員はもっと働いているように見えているよね。

9時に家を出て、会社近くのサンクスかファミマで軽食を買って、10時に会社に着いて、コンビニで買ったものを食べながらずっと仕事をしてる。ああ、そうだ。月曜日は9時出社だった。懐しいな。「ブルーオーシャン」がはじまる前には会社にいなきゃって感じで急いでたけど、いっつも間に合わなくて、住吉美紀の元気な、朝に聞くにはちょっと自分にはキツい声が聞こえていた。

会社では、話す相手もいないし、ずっと頭は痛いし、苦しかったと思うんだ。仕事中はラジオが友達だった。たまに知ってる好きな曲が流れると嬉しくなるよね。「ブルーオーシャン」が終わると「ラブコネクション」。ずっと君の支えになる番組だ。ラブコネクションがはじまるあたりでやっと仕事もエンジンがかかりだす。


仕事は大変だったよね。コンピュータサイエンスをやっていたわけでもないし、デザイン教育を受けたわけでもないのに、プログラミングとかデザインとか、そういう感じのことをやってる、小さな小さな、吹けば飛ぶような零細企業に入ってしまってさ。

周囲のほかの新卒の人たちは入社して長くて半年、短かくても1週間くらいは研修を受けているのに、君は謎のマナー動画を見て、名刺を作って入稿する。それが研修のすべてだった。いろんなことが常にトライアンドエラーをしながら独学だ。もしかしたら、違う会社に入れていたら、もっとスムースにいろんなことを学べたのかもしれない、なんて幻想を追いかけてみたりもする。でも、体系立てて学ぶってことが本当に苦手なんだなって、大学で痛いほど学んだはずだ。君は問題が出現して、解きたいと思って、それを解決するために頑張るか、ってなっちゃったことしかできない。焦燥感のなかで進むことしかできないんだ。それは今もそうだよ。


お昼ご飯もけっこう遅かった。たいていは「スカロケ」がはじまる前……「アポロン★」や「シンクロのシティ」の間とかに、でも、スカロケの後に食べることもあった。「シンクロのシティ」はずっと好きだったよね。街録が面白い番組だ。なにも知らない君に、東京をちゃんと教えてくれた番組だった。あの雰囲気がたまらなかったよね。オープニングがすごくいい。

お昼は、近所の公園なんかで食べることが多かった。仕事場にはいたくなかったし……余裕があるときはドトールでカルツォーネとか食べてた。よく覚えてる。ドトールでご飯を食べて、目を閉じて、落ち着こうとしていた。あの椅子、本当に天国みたいだった。あったかい日差しがあって、ふかふかの椅子。なんかおしゃれな音楽。ふしぎと涙が溢れて、そのまま会社から逃げたくなった日が多かったね。

とにかく、そうやって仕事をして、仕事が少ない時期なら「未来授業」が終わって、20時台の日替わり番組をやっている間に帰れていたかな。19時台に帰れたときはほんとうに少ない。だいたいは「スクール・オブ・ロック」がはじまるころに、慌てて打刻して帰る。たまに「ジェットストリーム」がはじまって本気で焦ってたりして。会社近辺の駅の終電を覚えてしまったよね。とにかく、君のような働き方が継続しているというのは、やっぱりちょっと普通じゃないみたいなんだ。


ええと、言いたかったことはそうじゃなくて、とにかく、君が定時に帰るのはレアイベントだったってこと! 4月から12月まで働いてきて、定時に帰れたことって何回あった? ……そうだよね。仕事のことで頭がいっぱいで何も考えられていない。友達を作ろうとか、楽しいことをしようとか、本当にたまに思うことはあっても、実行に移せなかった。そりゃそうだ。頭がいっぱいで何も考えられていない。そう言うと、君は、「いや、ちゃんと考えている」と言うだろう。でも、今の自分から見れば、君は、ほんとうになにも考えていなかった……というか、考えられなかったんだ。

でも、幸いなことに、君には家で待ってくれている人がいる。23時とかに帰ってきても、そこから一緒にセブンイレブンに行って、晩御飯を買って、一緒に食べてくれる人がいる。これは本当に、本当にありがたいことだったんだ。たしかに、たまにハーゲンダッツをねだられるけど。

ひとつアドバイスをするのであれば、ハーゲンダッツを買うなら少し遠いけどセブンじゃなくて駅前の西友で買おう。西友で売ってるハーゲンダッツ、10年後の自分からすれば、想像できないくらい安いんだよ! 10年後は、西友でもそんなに簡単に買える値段じゃなくなってしまっているからさ、今のうちにたくさん食べておいて!!

……じゃなくて、その待ってくれている友達を大事にしてほしいんだ。いや、もちろん君は、たぶんけっこう大事にしていると思う。でも、もっと大事に出来た気がしているんだ。あ、そうそう、彼が最近教えてくれたんだけど、君がキムチ鍋をチョイスして彼の部屋で無遠慮に食べてしまうことについては、わりと本気で嫌だったみたい。でもまあいっしょに住んでる間はなにも言われないし、シェアハウスの破綻の原因とは本当にまったく関係ないから気にせず食べちゃうといいよ。


シェアハウスの最後の数ヶ月はちょっとだけ空気が悪くなる。でも、君のせいじゃないから安心して。君は直接的な原因を知らないまま、空気だけが悪くなっていく。10年後の自分も、実はなんとなくしか原因を知らない。

確かなこととして、君は、ふたりとはそんなに仲は悪くならずに、終わったあともちゃんとやっていけちゃうんだ。ふたりの関係は、やっぱりわりと最悪なままみたい。でも自分は、彼らとバラバラにだけど、そして本当に極稀にではあるのだけれど、今でも会っているよ。

君は友達付き合いについてはいつも疎外感を感じながら生きているよね。馴染めていないかも、なんであんなことを言っちゃったんだろう、ああなんて馬鹿なんだ、と思いながら。でも君は、本当はそこにいるだけでいいんだ。それだけで、ちゃんと関係を築けているし、馴染めているんだ。そうじゃなきゃ会わないでしょ。破綻したシェアハウスの元住人なんかとさ。居酒屋に行ったり、カラオケしたり、したくないでしょ。でも、君とはそうするんだ。


とにかく、君はあと3年と数ヶ月すると、まるっと4年間のシェアハウス生活から半ば強制的に独り立ちすることになってしまう。いや、君も独り立ちしたくなるんだよね。あの空気は、あんまりよくなかったから。途中で「続けるかどうか」を話し合う日を半年ごとに設けるようになるんだ。で、半年後に出ようってなった。計画的に、穏やかに、破綻して終わる。自分はあまり気にしないようにしつつも、自然に気を使ってたように思うし、彼らも自分に気を使っていたように見える。

君は最後の日、二人がいろいろと中途半端にして出て行ったなか、ガスの閉栓作業に立ち会う。そして、ひとりで床を拭く。普段はまったく掃除をしない君が、床を拭くんだ。少しの義務感と、さっさと自分のものだけを持って出て行ってしまったふたりへの当て付けで。でも、そこが本当に「愛しい場所」だったから、というのが一番大きかった気がするんだよね。

何度もこんなことを言ってごめん。でも、このあとの3年間くらいは本当に楽しいから、自分にとって愛しい場所だったから、君にはそこを満喫してほしいんだ。たとえば、君は数日後、君の部屋で鍋をするよ。懐しい面々と会える。楽しそうにしている写真が残ってるんだ。自分は君の顔が本当に本当に本当に大嫌いだけど……でも、楽しそうにしてる。

それに、いろいろ書いちゃったけど、二人は本当に基本的にはいい人たちだ。面白いし優しい。君の仕事の様子についても心配してくれる。それに、彼らは彼らでいろんな経験をする。そして、それをシェアしてくれようとする。その手を離さないようにね。週末にはもちろん今までどおりに遊ぶし、いろんな経験ができるんだ。彼らは君をいろんなところに連れ出してくれる。だから、彼らとの時間を楽しんで。あの場所を楽しんで。そのメンバーで遊ぶことって、10年後の今は考えられないことだから。


さて、「そのあと」についても少し話しておこう。ちょっとキツい話かもしれないし、忘れてしまったって構わないよ。これはもっとネタバレになっちゃうから。

君はおんなじ最寄り駅の、アパートの一室を借りる。2万円くらい高くなった家賃に苦しみながら、なんとか頑張って生活をしていく。最初はけっこう楽しく思っていた。無印良品の家電で揃えたときは本当に感動したし、洗濯機のスペースに突っ張り棒を設置したりしてね。なんだって自分で好き勝手に出来る!

しかし、数ヶ月して、君はポキッと壊れてしまった。遅刻が増えたし、仕事中、聞こえてくる音のすべてにイライラしはじめた。最後には、会社にある小さなUSB扇風機のノイズ音が気になって、頭はぐるぐる、胸はバクバクしはじめるようになる。きっと、いろんなストレスをあの家ではうまく解消できていたんだ。でも、君は彼らに縋る以外の方法を知らなかった。

君は、Twitterの知り合いに、そりゃマズいよと言われ、素直に精神科に助けを求めた。電話をかけたんだ。そういうときすごく素直なのがいいところだよね。

予約が取れたのは1週間後、数ヶ月待ちとか言われちゃうこともある中で、わりと早く取れた。火曜日の午前一番。その日はとりあえず会社を午前休にして。思ったより普通のクリニックだった。ロビーは普通の内科っぽい感じ。そこでなんだか偉そうな女性の先生に出会う。最初は正直、ちょっと嫌な感じに思うかもしれない。だってなんだかめちゃくちゃ偉そうだからね。

でも、その先生も人間なんだって思えるようになると慣れてくるよ。この人は、自分に本当にいろんなことを教えてくれた。とにかく君は、数週間先生のところに通い、まずは知能テストを受けることになった。そうして分かったことは、君の脳の特性がなかなかに「面白い」ってことだ。

知能検査を受けた直後はあまり意味が分からなかった。というか、今も正直よく分かっていないけど、少しずつその「意味」を体感する。今でも、君はなんで自分はこんなことすら出来ないんだろう? みんなと違うんだろう?って思っていることがあるはずだ。君はなぜ、計画性がないのか。君はなぜ、そんなにずっと不安なのか。君はなぜ、そんなにいつも不安なのか。君はなぜ、「他人に興味がない」なんて言われてしまうのか。

ああ、泣かないで。分かっているよ。君は人一倍、人の顔色を伺ってる。なのに「他人に興味がない」なんて言われてしまうのは、本当に悲しいことだ。本当によく見てるって分かっているよ。でも「あんたは他の人に興味がない」って、よくお母さんに言われていたよね。でも、君としてはよく分かっていなかったし、不服だった。しかし、それは「当たってた」みたい。正しくは、君は他人に興味を持っている。でも、その振る舞いは、おそらく他の人にはそう見えない。だから、君が君の方法で「他人に興味を持とうとする」のはいい解決の方法ではなかったみたいなんだ。ちょっとした優先順序の違いとか、そういったことで誤解されているだけだ。君はなにも悪くない。

それに、君の頭のなかの言葉の解釈はちょっと独特みたい。国語の成績はそこそこ普通だったのに、君はまわり人たちの言葉を必死に誤読することしかできないんだ。なにか一つ、気になる言葉があると、そこにピントがあって、ほかはぼやけてしまう。うまく解釈ができなくなる。だから、君にすんなりハマる言葉はけっこう独特なんだ。君はなにかに失敗して、自分なりの正しい表現を見付けて「こう言ってくれればよかったのに!」って思いながら過ごしてきた。つらいよね。こうやって言われると、より辛いかもしれない。でも、それって脳の特性のせいなんだ。だから、というわけじゃないけど、大丈夫だよ。

それにしても君の脳味噌って、本当にとんでもないバグだらけだね。数年前に別の病気を知って、一生お薬を飲まなきゃ!ってなったのに。その薬のせいで、お酒も飲めないね、ってなったのに。脳の特性までなんか面白いことになってるなんてね。あー酒を飲まないとやってらんないよ。あぁ、ごめんごめん、君は飲めなかったね。今も飲めないよ。


これからも飲みたいなーと思う日は増えていく一方。とくに君が住んでいるあのあたりは飲み屋街がたくさんあるしさ。通勤路だって、まさに飲み屋街じゃない。同居人のふたりはそういうところで「東京の人」と仲良くなっていく。君はそれを指を咥えて見ているだけだ。分かってる。けっこうキツいよね。置いていかれていく気分になる。分かる分かる。まあ、大丈夫だよ。

それにほら、君ってなんだかんだで「酔えない」ほうでしょ。すぐに胃が痛くなっちゃう。水とかジュースみたいにガバガバ飲んじゃうから。あ、それに、そもそも飲んでなくても酔っぱらってるみたいだよね。楽しいときは人よりもテンション高くなって、馬鹿みたいにすぐ飛び跳ねちゃうでしょ。だから、いいんだよ飲まなくて。


また話が脱線してしまった。とにかく精神科では、睡眠時間を整えるお薬と、たまに不安を抑えるお薬や漢方なんかをもらって、カウンセリングを受け続けることになる。そして、それはまだ続いてる。

脅かすようなことを言ってごめん。でも大丈夫。薬は君を本当に助けてくれる。君は一ヶ月に一回くらい「朝まで起きてなきゃいけない日」があるよね。脳味噌がうるさくて本当に仕方がないやつ。あれが本当に目に見えて減るんだ。君は泣きながら、安眠できる音楽をYouTubeで探して、でも全然眠れなくて……あんな苦しくて、なにもできないどうしようもない夜が激減する。なくなりはしないけど、確実に減るし、そういう夜を受け入れられるようになる。

それから、カウンセリングもかなり助けになってくれている。ああ、大学の頃、「お隣の学科」の人たちが頑張って勉強していたアレのお世話になるんだ。君は自分をみつめ直す機会を与えられる。自分には思っていたよりもいろんな問題があると分かっていく。カウンセラーの先生曰く、来た当初は何を言ってるのか分かんなかったんだって。会話ができていなかったらしい。まあ、分かるよ。とにかく、君はまず自分の感情を見付け、心の地図を埋めていくという作業を、めちゃくちゃ長い時間をかけてやっていく。どういうこと? 分かんなくていいよ。カウンセラーの先生が見ててくれるから。勝手にそうなっていく。


精神科の先生やカウンセリングの先生なんかと話をしながら最近分かったことは、君が今の日本社会で、東京で、会社員として働く上で必要だったものがなかった。同じ立場のロールモデル……つまり「雇われ人」として働く「先輩」が、自分のそばにいなかったっていうのが実は結構大きな問題だったんじゃないかなって。君の会社って今は、数人しかいないよね。そして君のそばにいる人たちは、世間一般でいう「雇用主側」だ。

雇用主は、24時間会社のことを考えているべき人たちだし、君を使おうとしてくる。それに、まあ相性もあるよね。真の君の理解者にはなりえないんだ。君の上司は雇用主として、本当に立派な人だ。少なくともずっと会社のことを考えていて、誰よりも働いているし、君の精神的な面もちゃんと考えてくれる。それに、変なことで叱ったりしないしさ。すごくいい人だよ。でも、彼は雇用主だ。彼は働くことを求める側だし、彼の働き方は普通の「雇われ人」とは違う。君は、そんな「雇用主」が唯一の身近な先輩だった。だから、オーバーワークが当たり前だと思っているし、でも新人だから当然、全部を抱き抱えてパンクするまで待つことしかできない。

大事な時期に、そんな上司の姿しか見ることができなかったこと。これがこの10年で一番の不幸だと、今、自分は思っているよ。

上司からは「無理だと思ったら相談して」って言われているよね。その人はやさしいし、本当に頼りになる。勇気を出して相談をすれば、わりとなんでも融通を効かせてくれるし、先方との調整もしてくれる。でも、君が上司をこれ以上苦しめたくないって勝手に思ってしまうのはすごく分かるんだ。なんというか、申し訳ないよね。でも、それは上司の役割だし、そういう決断をしてその座にいる人なんだから、君がそこを考える必要はない。仕方がないことなんだ。

と、そういうことを知るまで随分時間がかかったんだ。

まあ、そんな感じで、残念ながら2024年になっても、ドラマなんかで見るような「先輩」がいるような環境にはいない。今はもう半ば諦めてて、いびられることもないからまあいっかなぁーって思ってるけど……しかもリモートワークだから、自分が身近な先輩になることもできない。ははは。


あ! でも「ビバ丼」っていうSNSがあって……なんていったらいいんだろう……数年後にVivaldiっていうOperaの社長さんが立ち上げた新しいブラウザが出てきて、そこがやってるSNSに君は行くんだ。(ちなみに、Vivaldiは本当に素晴しいブラウザなんだよ、楽しみにしてて。)

君は、2022年の12月1日に、Vivaldi Social 通称ビバ丼に登録する。登録した日にちょろちょろっと投稿して十数日後、いろいろあって、君がTwitterを”見捨てる日”がくる。そんな日が来るなんて思っていないよね。自分もそんなこと思ってなかった。とにかく君はその「ビバ丼」ってとこに移ることになるんだ。そしてそこで自分は、なぜか今いろんな人を「先輩」って呼びながら過ごすことになっていく。年下の人すら先輩って呼んじゃってる。年齢不詳、職業不詳の先輩たちに囲まれてる。

ネット上でもたくさんやりとりをしているし、実際に会ったりもしている。今年のはじめには大規模なオフ会があって名古屋に集まった。名古屋に行こうなんて思ったことないでしょ。それに、今月だけでも、宇都宮で餃子を食べたし、西葛西でインド料理を食べたりもした。ほかにも、カラオケに電車に乗ったり、ただご飯を食べて、街をぶらついて。ゲームセンターに行ったり、公園でアイスを食べて変な茶番をしてたら雨が降ってきて、駅まで逃げたりするんだ。30過ぎて何やってんの! って思うかもしれない。でも、年齢は意外と大した問題じゃないみたいなんだ。


2024年の今日、自分はアラフォーと呼ばれる年齢になった。君は35歳になっても、君のお父さんとお母さんが築けていた「幸せな家庭」は築けない。それどころかパートナーもいないしね。それにひょんなことから昔付き合っていた人が、知らない誰かと結婚したって話をクリスマスに知ることになったりもするし、そもそもそのときの恋愛経験と思っていたものが本当に恋愛だったのか、といった問題に向き合うことになる。あの人は本当に君を愛していただろうか。そして、君はあの人を愛してなかったよね。自分は恋愛ができるんだと安心したふりをして、本当は怯えていただけなんだよ。分かってるよね。

とにかく30歳を過ぎてから、本当にいろんな現実を突き付けられて、泣いたり笑ったり、焦ったり喚いたりしながら、それでも一日一日を生きているよ。でも、それってたぶんみんなそうなんだと思うし、なにより、さっき言った精神科医は、こう言ってくれるんだ。

「人間って本質は全然変わんないんだよねー。あたしもそうだけどさぁ。だから、『こんな年なのに』とかはナシ! 泣き虫でいいんだよ。泣いたっていいじゃんねぇ。あははぁー」

この言葉は、今の君はイラッとしてしまうと思う。でも、この言葉に救われたように思える日がやってくる。これは本当のことなんだ。


なぜこれを書いているかというと、とにかく君に大丈夫だって言いたいからだ。いや、たぶん君は不安になっちゃうと思うけど……いや、どうなんだろう。君に与える影響については、書いていて分からなくなってきたな。

そして、これを公開する意味としては、とにかくビバ丼の先輩たちに、こんな自分と一緒にいてくれてありがとうございますって伝えたいから、という部分が大きい。ここまで赤裸々に話したことなんて、たぶん精神科とカウンセラー以外にはないし、ちょっと嫌われるかもしれないとか、単純に怖いなとか、いろいろと思ってしまう。でも、少なくとも東京に来てからの自分を隠しても、たぶんごまかしきれないと思うし、なにより正直になりたいから。


君が思ってるアラフォーとは、おそらく全然違うだろう……と書いてみたものの、多分そうじゃないよね。今、君は目の前のことで忙しくて、未来のことなんて考えられていない。ビバ丼の年下の先輩たちを見ていると分かる。みんなすごく未来のことを考えている。でも、君は考えられないような場所にいた。だから、将来、自分がどうなっているかすら考えられていなかった。不安もあまり感じていないはずだ。心に鍵をして、必死に守っているから、麻痺しちゃっているんだね。可哀想だ。

でも、大丈夫だよ。君はそのまま、よく分かんないままで、まっすぐに歩いていけばいい。五里霧中だけど、そのことすら気付いていない。少なくとも、そのままあと10年間は、なんとかかんとか生きていけるから。とにかくそのまま歩き続けてほしいな。

とにかく、今の自分は、君が感じられなかった10年分の不安を、ギュウッッッと濃縮して感じているんだ。業務用の濃縮還元ジュースの原液を飲んでいるような。水か炭酸水が欲しいかも。けっこう苦しいこともたくさんある。でも、大丈夫だよ。今、君が思ってるより、だいぶ幸せなんだ。


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